鬼平犯科帳

剣術道場

平蔵は師匠である高杉銀平直伝の一刀流の使い手です。
鬼平犯科帳の中には、
配下を引き連れて盗賊のアジトに乗り込む場面、
凄腕の刺客と一対一で戦う場面、
多勢相手に苦しいながら、必死に戦って活路を見出そうとする場面、
などで、彼の凄まじい剣技についての記述が沢山あります。
幾通りもの書かれ方があるのですが、


目にもとまらぬ抜き打ちの一閃が平蔵の腰間から疾った。
「春雪(十三)」

身をひねって、これをかわした長谷川平蔵の腰間から疾り出た粟田口国綱二尺二寸九分の太刀が、そやつの肩口からくびすじへかけて切り裂いた。
「殿さま栄五郎(十四)」

ぱっと、二人の躰が入れ替わったとき、平蔵の腰間から一筋の光芒が疾った。
「おれの弟(十八)」


以上に見られるように、「腰間から疾り出た・・・」という記述が、特に好きです。
最初の頃はあまり使われず、中盤から、こういった記述がされるようになりました。
他にも、


身を沈め、土間から躍り上がって肉薄した長谷川平蔵が、恩師・高杉銀平直伝の居合術で抜く手も見せぬ電光の一撃……。
「むかしの女(一)」

身を沈めざまに、亡父ゆずりの粟田口国綱二尺二寸九分余の太刀をふるって長谷川平蔵が、たちまちに一人を斬って殪した。
「兇剣(三)」


といった記述もあり、それらも好きですが、やはり先に述べたものの方が、より洗練されていて、鋭い感じがします。


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