「Odore dell' Angelo」 page 6

INDEX BACK
甘い髪の香り、ミハエルの匂い。
それは、女の匂いとは違うし、多分、母親の匂いでもないのだと思う。

もし天使というものが存在して、それを抱きしめたとしたら、きっと こんな匂いがするんだろう。
ミハエルの胸に顔をうずめて、カルロは、ぼんやりと そんな事を考えていた。


ずっと、その日暮らしで
先の事なんて、見えなくて
明日の事も、分からなくて

なのに・・・

ミハエルがいる未来を、こんなにも信じようとしている自分がいる。
ミハエルが自分の隣にいる未来を・・・


『馬鹿馬鹿しい』
普段の自分なら、きっと そう思って、忘れてしまうのだろう。
感傷的な気分に浸るのは、得意ではない。
けれど今日はなぜか、切り捨ててしまう気になれなかった。


手を伸ばして、ミハエルの背を抱く。
髪が滑る手の平に柔らかな羽が触れたように感じながら、カルロは やがて気絶するように眠ってしまった。



次にカルロが目を覚ましたとき、ミハエルは腕の中ですやすやと寝息を立てていた。
窓の外はすっかり暗くなっている・・・どうやら、数時間は眠ったらしい。

ふと気がつくと、体が軽い。
手を当てた額は、すっかり冷たくなっていた。
カルロは改めて、眠っているミハエルの顔を まじまじと覗き込む。

こいつ、もしかしたら本当に天使かもしれないな・・・

うっかりと そんな事を考えてしまった自分が可笑しくて、頬が緩む。
カルロはミハエルを起こさないように、そっと その額に唇をあてた。

「Grazie・・・明日は、ちゃんと模型屋に連れてってやるよ」

元気になると、食欲も湧いてくる。
カルロは小さな天使の頭を一撫でして、二人分の夕食を作りに台所に向かった。

L' Estremita.
INDEX BACK

「Odore dell' Angelo」・・・Smell of Angel(伊)