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「やっぱり君たち、見込みあるよ・・・半年もあれば一軍に上がれるんじゃないかな」

圧倒的な実力差を見せ付けられて顔を上げる事も出来ずにいる二人に、ミハエルは そう告げる。
天才の直感は、この二人が近い将来、自分の片腕になるであろうことを感じ取っていた。
ミハエルは暗にそう言ったのだが、今の二人には、到底理解できるはずはない。

無邪気に微笑むミハエル。
最初から最後まで、まるで変わることの無いその笑顔が、かえって突き放されているような印象を受ける。
自分達はミハエルの足元にも及ばない。
残された二人は唇を噛みしめた。



施設からの帰り道・・・
それまで一言も口を聞かなかった二人だったが、ようやくエーリッヒが口を開いた。

「さっきはごめん・・・叩いたりして」

「・・・・謝るなら叩くな」
シュミットは、ふいとそっぽを向いた。
エーリッヒは それ以上何も言えず、しょんぼりとうなだれてしまった。

誰かに手をあげた事など、今まで一度も無かった。
それなのに、初めて・・・しかも、よりによってシュミットに手をあげてしまった。
深い後悔の念に苛まれていたエーリッヒは、ふと、シュミットが自分を見つめている事に気がついた。

「嘘だ・・・本当は・・・あの時私を叩いてくれた事を感謝してる」

シュミットは頬を赤らめる・・・しかし目を逸らすことはない。
エーリッヒはシュミットの言葉の意味が理解できずに、目を白黒させている。

「あのままレースを止めていたら、何か大切なものを失ってしまっていた・・・そんな気がする」
「だから・・・・ありがとう」

シュミットは恥ずかしそうに微笑むと、エーリッヒのシャツの袖を軽く掴み、少し背伸びをして、彼の頬に唇を寄せる。
自分の身に起こっていることを理解したエーリッヒは、耳まで真っ赤になって固まってしまった。


しかし、シュミットは すぐに離れると、今度は厳しい表情でエーリッヒを見上げた。

「ミハエルが最後に私達に言った言葉、覚えてるか?」

エーリッヒが顔を強張らせる。
忘れるはずも無い、天使のような笑顔で発せられた屈辱的なセリフ。
二人の思いは一つだった。

「半年なんているものか!一ヶ月で一軍に上がってみせる」



そして一ヵ月後。
見事一軍入りした二人は、ミハエルを感心させる事になる。

L' Estremita.
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「Speicher」・・・Memories(独)