12年前、俺は孤児院の前に捨てられた
生まれて間もなかった俺に、その時の記憶は無い
俺を捨てた親の顔すら、覚えていない
俺を拾った孤児院の院長が、俺に名前を付けた
別に何でも良かった
意味や理由や由来なんてものは無い
名前がないと不便だから
俺に名前が与えられた理由は、それだけ
親が名前さえ付けずに俺を捨てた事を
俺はある意味感謝している
身勝手に捨てられたうえに
身勝手な同情で付けられた名前を背負って生きるなんてまっぴらだ
誰かを殴るとき
誰かのマシンを壊すとき
一瞬だけ、過去の暗闇から開放された気になる
追いすがってくる全てを蹴散らして栄光を手にしたとき
自分がこの世に存在している事を
はっきりと実感する事が出来る
名前なんて必要ない
名前なんて無くてもいい
ずっと、そう思っていた―――
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