『もしもし、進藤と言うものですが・・・てっ、鉄男さんはいらっしゃいますか?』
『おう進藤!オレ、オレ!!久しぶりだなー・・・どうした?』
『・・・加賀!助けて!!』
「ったく、大げさなんだよお前は!」
電話で呼び出され、待ち合わせ場所に先に来ていた加賀は、
ヒカルがやってくるなり、首根っこを捕まえて、その頭を小突いた。
「だ、だって・・・ホントにやばいんだよ〜!」
事の発端は今日の昼休み。
職員室に呼び出されたヒカルは、先生にプリントの束を渡された。
「最近、目覚しく成績の落ち込んでる進藤に、特別に宿題を出そう!」
先生は皮肉たっぷりにヒカルに微笑みかけた。
院生になってからというもの、以前から少なかった勉強時間は、ますます少なくなり、
それに伴って成績の方も急下降していた。
それゆえ今回の宿題は致し方ないものだが・・・それにしても、量があまりに多すぎる。
まともにやっていたのでは、囲碁をやる時間が無くなってしまう。
かと言って、やらずに済ませる事が出来るわけもない。
歴史や古文なら、佐為の出番となるのだが、残念な事に、宿題を出したのは英語の先生。
考えに考えた末にヒカルの出した結論は、『加賀に宿題を教えてもらう』だったのだ。
「このとーり!加賀だけが頼りなんだよ!加賀ってば、すっげー頭いいじゃん?」
加賀はヒカルの首根っこを掴んだまま、未だ しかめっ面をしていたが、
手を合わせて必死に自分を拝むヒカルの様子に、満足げに頷いた。
「ま、オレは天才だからな・・・しゃーねぇ、出来の悪い後輩のために一肌脱いでやるか!」
ようやく開放されたヒカルは、すっかり機嫌の直っている加賀を横目に、佐為に小声で囁いた。
「な?加賀って結構、単純だろ」
「何か言ったか?進藤」
「な、何でもないよ!」
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