「ただいまー・・・あれ?」
元気よく帰ってきた烈は、玄関で首をかしげた。
そこには、見慣れた青色のブーツ。
くたびれて泥んこになっているそれは、掃除当番の烈にパタパタと手を振って、一足先に下校した豪のもの。
でも、豪が家にいるはずは無い、少なくとも烈は、そう思っていた。
とりあえず部屋に行ってランドセルを下ろすと、隣の豪の部屋を覗いてみる。
オモチャが散らかり、ランドセルが無造作に投げ捨てられた部屋の真中で、
ぽつんと座り込んでいる豪の姿があった。
「豪!お前・・・どうしてここにいるんだ?」
「・・・いちゃ悪いかよ」
豪は烈に背中を向けたまま、振り返ろうともしないで、漫画を読んでいる。
どうも様子がおかしい。
昨日、土屋博士から聞かされた時、豪もその場にいたのだから、知らないはずは無いし、忘れているわけも無いと思うのだが・・・
「昨日聞いたろ?ブレット君達が来るって」
「あー」
「どこのホテルに滞在してるのかも、知ってるだろ?」
「知ってるよ」
「会いに行かないのか?・・・ブレット君に」
豪は烈の問いには答えず、漫画本を閉じると、ベッドによじ登って寝転がった。
ふて腐れた、でも、寂しそうな背中。
烈に話を聞いてほしい、そう言っている背中だ。
烈は肩をすぼめると、オモチャを踏まないように歩いて、豪の椅子に座った。
散らかった机の上を片付けたりして、しばらく待っていると、豪が独り言のように話し始めた。
「俺・・・学校の帰りに行ってみたんだ・・・そしたら―――」
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