「あの時、ブレットの顔見たら俺・・・急に怖くなったんだ」
豪は両手を膝の上でぎゅっと握り締めて、俯いた。
ブレットはベンチの背もたれに寄りかかって、真っ直ぐ前を見つめている。
風が、吹きぬけた。
「俺だって怖い・・・ゴーに嫌われるんじゃないかと思うと、怖くて仕方ないんだ」
豪は、はっとしたようにブレットを見上げた。
普段は、今この時においてさえも、ブレットの表情に、それは表れることはないし、
今まで口にすることも一度もなかった。
ブレットの言ったことは確かに本心ではあるが、彼の精神は、それを正しく処理し、然るべき場所にしまい込む事ができる程に完成されている。
つまり、大人であるわけだが・・・
それを引っ張り出してきてまで口にした理由は、一つ。
隣で うなだれている少年に、自分も同じように考えている事を、
自分も同じ不安を抱いている事を、教えたかった。
「大丈夫だよ!俺、ブレットのこと嫌いになったりしないから!絶対、嫌いになったりしないから!!」
豪は悩んでいたこともすっかり忘れて、
必死になって、ブレットの手や肩や背中をさすったり、頭を撫でたりする。
ブレットはくすぐったくなって、思わず吹き出してしまった。
「分かった、分かったよ・・・Thanks、Goh」
ホント?と自分の顔を覗き込む豪の、その愛らしさに目を細めながら、
ブレットはひょいと、その小さな体を持ち上げて、自分の膝の上に乗せた。
「俺もゴーのこと嫌いになったりしない・・・約束するよ」
指きり代わりに、幼い鼻先に、そっとキスをすると、豪は照れて赤くなりながらも、嬉しそうに微笑んだ。
やがて豪は家路につき、ブレットはそれを送った。
どちらからともなく手をつないで・・・あれから公園で随分話したけれど、まだ話は尽きない。
二人は ごく短いその道のりを、出来るだけゆっくりと歩いた。
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