エーリッヒは優しい。
それがエーリッヒの長所であり、魅力である。
けれど・・・
エーリッヒは、誰にでも、優しすぎる。
ベッドの上で膝を抱えていたシュミットは、サイドボードに置いてある鏡を手にした。
そこに映るのは、眉を吊り上げ、口元を歪ませた自分の顔。
鏡の中の自分と目があって、シュミットは、はっとした。
『恐い顔・・・』
目を閉じると、天使のように優しげに微笑む、赤髪の少年の姿が浮かぶ。
『エーリッヒは、レツ・セイバのように、可愛い顔をした子が好きなのかな・・・』
続いて脳裏をよぎった自分の考えの愚かしさに、シュミットは拳を握り締めた。
私はそんなに馬鹿じゃない。
エーリッヒがレツ・セイバに対して、特別な感情など持っていない。
あくまでライバルの一人として接しているだけ。
そんな事は分かっている。
分かっている・・・ハズなのに・・・・
楽しそうに笑いあう二人を見ていると、どうしようもなく胸が締め付けられる。
たまらなく不安になる。
平静でいようとすればするほど、取り乱してしまう。
そんな弱い自分自身を思い知らされることが、シュミットのプライドを傷つけて、より一層苦しめていた。
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