エーリッヒとは相部屋であるはずのシュミットが今 一人でいるのも、発端は烈だった。
その日の昼過ぎ、烈が寄宿舎にエーリッヒを訪ねてやって来た。
「エーリッヒ君!こないだ会った時にハンカチ落としていっただろ?」
烈はきちんとアイロンが掛かって綺麗に折りたたまれたハンカチを差し出した。
「ああ・・・ありがとうございます、わざわざ・・・お、お茶でも飲んでいってくださいよ」
自分の後ろで、シュミットの顔がどんどん険しくなっていくのが分かったので、
エーリッヒは手早くハンカチを受け取ると、烈をソファに座らせ、そそくさと紅茶をいれに行った。
3人分の紅茶をいれるエーリッヒの背中に、冷たい視線が突き刺さる。
エーリッヒが慌てて振り向くと、明らかに不機嫌そうな顔でエーリッヒを睨んでいるシュミットがいた。
『私の知らないところでレツ・セイバに会ったんだな』
シュミットの目が、そう 言っているのが分かる。
確かに先日 烈に会ったとき、シュミットはいなかった。
正確には、いつもの如く ふらりと出かけてしまったミハエルの代わりに、FIMAの会議に出席していたのだ。
けれど、烈の横には弟の豪も、他のビクトリーズのメンバーもいた。
もちろん用件も、ちょっとした連絡事項に過ぎない。
もろもろの事情を目で訴えてみようと思ったが、時すでに遅く、シュミットの姿はそこには無かった。
エーリッヒは肩を落とすと、一つ余ったしまった紅茶を、なすすべもなく見下ろした。
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