「熱病」 page 1

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金鰲をオートパイロットに切り替えると、聞仲は大きく息をついた。
崑崙には、順調に行けばあと数時間で到着するだろう。

額に滲んだ汗を何度も拭うが、拭いきれない汗が首筋を流れる。
まるで熱病に侵されたように体全体が熱い。
操縦席を離れてマントを脱ぎ捨てる事さえままならぬほど、疲労困憊していた。


「聞仲よぉ・・・本気か?死ぬほど力を使うはずだぜ」

発進前の王天君の言葉が脳裏を過る。

奴に言われるまでも無く、分かりきっていた事。
今は少しでも休まなければ・・・

コントロールルームの照明を全て落とすと、聞仲は静かに目を閉じた。



未来永劫続くような、深い、深い闇・・・
ただ一人、そこに漂い、さ迷うような感覚。

私は、いつから ここにいるのだろう・・・


あの男と道を違えた時から、私は、もう、ここにいたのかも知れない。

かつて友と呼び合った男。
あいつは、私を殺しに来るだろうか・・・?
私は、あいつを殺すのだろうか・・・?

決して抜け出せない。
狂ってしまった歯車は、元には戻らない。


暖かい あの男の笑顔を心に浮かべようと思いをめぐらせるが、
その輪郭はぼやけてしまうばかりだった。


その時、耳障りな程に冷たく響く靴音が、遠くの方から聞こえてきた。

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