金鰲をオートパイロットに切り替えると、聞仲は大きく息をついた。
崑崙には、順調に行けばあと数時間で到着するだろう。
額に滲んだ汗を何度も拭うが、拭いきれない汗が首筋を流れる。
まるで熱病に侵されたように体全体が熱い。
操縦席を離れてマントを脱ぎ捨てる事さえままならぬほど、疲労困憊していた。
「聞仲よぉ・・・本気か?死ぬほど力を使うはずだぜ」
発進前の王天君の言葉が脳裏を過る。
奴に言われるまでも無く、分かりきっていた事。
今は少しでも休まなければ・・・
コントロールルームの照明を全て落とすと、聞仲は静かに目を閉じた。
未来永劫続くような、深い、深い闇・・・
ただ一人、そこに漂い、さ迷うような感覚。
私は、いつから ここにいるのだろう・・・
あの男と道を違えた時から、私は、もう、ここにいたのかも知れない。
かつて友と呼び合った男。
あいつは、私を殺しに来るだろうか・・・?
私は、あいつを殺すのだろうか・・・?
決して抜け出せない。
狂ってしまった歯車は、元には戻らない。
暖かい あの男の笑顔を心に浮かべようと思いをめぐらせるが、
その輪郭はぼやけてしまうばかりだった。
その時、耳障りな程に冷たく響く靴音が、遠くの方から聞こえてきた。
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