靴音の主は爪を噛みながら、薄暗いコントロールルームの中をゆっくりと進む。
計器の光にのみ照らされたその頬は ますます病的で青白く、背筋が凍りつくような美しさを醸し出している。
まるで死人が歩いているような・・・そんな印象すら受けてしまう。
操縦席の聞仲はピクリとも動かない。
王天君は さらに背を丸めて その様子をしばらく見物したあと、くるりと背を向けた。
「寝てんのかよ、だらしねぇ・・・ま、さすがの聞ちゃんでも、アレだけ力使えば、しゃーねぇか」
肩を大げさなほど揺らせ、噛み砕く様に笑う。
大人のものとも、子供のものともとれない声が、静寂に包まれていたコントロールルームに響く。
「・・・うるさいぞ、王天君」
「何だよ、起きてたのか」
そんな事は、百も承知。
聞仲が金鰲島を動かすために、かなりの力を使い、崑崙につくまでの時間を回復に充てようとする事も、
その間、クソくだらねぇ感傷に浸るであろう事も。
だから、邪魔しに来てやったのさ・・・
一人の時間を邪魔されてご機嫌斜めになってんのもダセぇが、
無視を決め込むのも、コイツらしくて、つまらねぇ。
結局それも叶わずに、こうして俺の相手をしてやがる。
つくづく、からかいがいのねぇ男!
引き上げた口元で、ピアスが鈍く光った。
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