当の聞仲は、ますます熱が上がってきていた。
目の前で嫌味な笑みを浮かべているはずの王天君の姿さえ、うまく捉えられない。
「・・・用件は何だ?至急な事か?」
出来るだけ呼吸を整え、平静を保って応対する。
体調がどうであれ、私は通天教主さまより この金鰲の全権をお預かりする身。
王天君がわざわざ来るからには、何か特別な理由が・・・
「べーっつにぃ・・・用なんかねぇよ」
・・・・・・・!!
いつものいい加減な口調で ものの見事に あっさり覆されて、聞仲の顔が怒りに強張った。
そんな聞仲を、王天君は 余すことなく飾り立てた指をヒラヒラさせて煽ってみせる。
最悪に無愛想なこの聞仲ってぇ男は、怒らせると怖えぇが、それが面白くてたまらねぇのさ。
すぐにブチキレて禁鞭を振り回すのは悪い癖だがなぁ。
しかし、聞仲は大きくため息をつくと 目を伏せて黙りこくってしまった。
怒りが納まったわけではない。
むしろ煮えくり返ってさえいるのだが、しかし・・・
王天君は軽く爪を噛んだ。
ふーん・・・
さしもの聞仲も、どうやら本気でお疲れらしいな。
つかつかと歩み寄ると、聞仲のまん前にしゃがみ込んで、足元から無遠慮にその顔を覗き込む。
「暇なら遊んでやろうか?ええ、聞ちゃんよぉ・・・」
聞仲は薄っすら目を開けると、ぼんやりした表情で王天君を見下ろした。
暗闇で青白く光る王天君は、一片の温もりも無い、まるで氷のごとく冷たい物の様に見えた。
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