「んなことより、ルキノに何の用だよ?!」 黙っていると、ミハエルが余計なことを藤吉に喋りそうなので、カルロは先に話題を切り出した。 「え?・・・あ、会いに来たんでげす」 言いながら、藤吉は、ミハエルの頭に乗せられたカルロの手をぼんやりと見ていた。 さっき藤吉の頭をわしづかみにした時とは、まるで違う手。 あの日、自分の頭に乗せられていた暖かいルキノの手。 その手は・・・今カルロがミハエルの頭に乗せている手と、同じだったのだろうか・・・? 「ね、カルロ!ルキノ君のところに連れてってあげようよ・・・部屋知ってるんだろ?」 ふさぎこんだ藤吉を見て、ミハエルがカルロに言った。 カルロは何も言わずに、ミハエルの頭を一撫でした。 あちこち壊れかかったアパートの薄暗い一室がルキノの住まい。 昨日は徹夜のバイトだったルキノは、心地よい眠りについていたのだが・・・・ ドンドンドンッ! 「おいっ、ルキノ!開けろテメー!!」 「うわっ」 まるで嵐が来たような騒音に、ルキノはベッドから転がり落ちた。 放っておくとドアを蹴破られるので、ルキノは渋々ドアを開けた。 しかし、そこにいたのはカルロではなく、この数日間ずっと頭の片隅にいた少年。 「トーキチ!」 思いがけず名前を呼ばれて、藤吉は赤面した。 ずっと聞きたかった声、ずっと見たかった顔。頭が真っ白になる。 「な、何しに来たんだバカ!ここがどんなトコだか分かってんのかよ!」 頭が真っ白になったのはルキノも同じだった。 他人の身を案じたことなど今まで一度だって無かった自分が、こんなに取り乱している。 けれど、今は そんなことに構っていられない。 藤吉は、すまなさそうに縮こまった。 「さっき分かったでげす」 「ったく・・・・バカやろっ!」 力いっぱい抱きしめられた。 息ができなくて もがいていると、少し力が緩められて、うまくルキノの腕の中に収まった。 ルキノは、何も喋らない。でも、これが答えなのだと思う。 藤吉は目を閉じた。 「単身手ぶらでイタリアに飛んで来たってか?無計画もいいとこだぜ」 ルキノは呆れ顔で、相変わらず縮こまっている藤吉にコーヒーを差し出した。 「・・・・で、今日はどうするんだよ」 「えっと・・・まだ考えて―」 「晩飯おごってくれるんなら、泊めてやってもいーけど」 藤吉は目を丸くしてルキノを見た。 『泊まっていけ』と言うだけなのに、ワンクッションもツークッションもおいてしまう、本当に素直じゃないルキノ。 なんだかくすぐったくて、妙に嬉しい。 「じゃあ今日は、ここに わてのお気に入りの一流シェフ達を呼ぶでげす!早速電話するでげす」 藤吉は携帯を取り出すと、あちこちに電話をして回る。 ルキノが事の重大さに気が付いたときには、すでに手遅れだった。 「な、何考えてんだお前!」 「調理場もトレーラーで運ぶから大丈夫でげす!」 「そんな事言ってんじゃねぇ〜〜!」 |
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L' Estremita. |
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