「空と憂鬱」 page 1

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それは、漠然とした不安だった。
普段は忘れてしまうくらい小さな事で・・・


夕日をランドセルをしょった背に受けて、家路を急ぐ烈。 今日返ってきたテストの事、昼休みに屋上でやった草レースの事、豪が宿題を忘れて たまみ先生に怒られた事など考える。

不安は、久しく忘れていた。

「豪のヤツ、宿題なんて無いよーって言ってたくせに!」
烈はブツブツ独り言を言いながら、この角を曲がれば家が見える所までやってきた。


「あれっ?あそこにいるのは豪じゃないか」
電柱の影で ゆらゆらと揺れる、見覚えのある紺色の髪。
蓋が開いたままのだらしないランドセルも、毎日見ているそれだろう。
烈は笑いをこらえながら、そーっと近づいていった。

声をかけようとした瞬間、豪の向こう側にいる人物の姿が目に飛び込んできた。

アストロレンジャーズのリーダー、ブレット・アスティア。
豪よりずっと背の高い彼は、片膝を地に付けて、豪に目線を合わせ、話を聞いている。
人前で外す事の無いゴーグル・・・今日はサングラスをジャケットの胸元に差して、とても優しい瞳で豪を見つめる。

烈は声をかけるのをためらっていた。
烈が出ていけば、きっとブレットは立ち上がって、サングラスをかけてしまうだろう。
二人の邪魔をしてしまうようで、何だか気が引けてしまう。

その時、ブレットが何気なく豪の髪に手をかけ、その左の頬に軽くキスをした。
豪は眉を寄せて困ったような顔をしているが、何も言わずに大人しくしている。
会うたび これなので、さすがの豪も慣れてきたらしい。
それでも、やはり恥ずかしいのか、頬をほんのり染めている。

再び話を始めた二人の後ろには、もう烈の姿は無かった。


豪より何倍も顔を赤くした烈は、そのまま元来た道を引き返して、別の道から家に帰っていた。
足取りが重いその脳裏には、さっき見た光景が いつまでも離れない。

久しく忘れていた不安が、浮かび上がってくる。

『どうして・・・・』
『どうしてリオンは・・・・』

強い風が吹いて、烈は思わず帽子を押さえる。
豪とブレットの姿は、いつの間にか消え、心にはリオンの笑顔だけが浮かんでいた。

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