「空と憂鬱」 page 2

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随分回り道をして、ようやく家の前にたどり着いたとき、烈は目を丸くした。
玄関の脇に立てかけてある それは、彼が「ジェットローラー」と呼んでいるもの。

『リオンが家に来てる・・・!』

鼓動がどんどん早くなって、顔が一気に赤面する。
遠く離れている時とも、隣で話している時とも、全然違う感情。
玄関の戸を開ければ、リオンがいるかもしれない。
それとも、2階に上がって部屋のドアを開ければ?
リオンの姿をその目に捕らえる瞬間に、どうして、こんなにも心が揺らされるのだろう。


その時、玄関の戸の開く大きな音が、烈の意識を引き戻した。
その瞬間は、いつも唐突に、予想を裏切って訪れる。
それは、初めてリオンと出会った時から変わらない。

中から出てきたリオンは、差しこむ夕日に目を細めながら、烈に微笑みかけた。
「久しぶりだな、烈・・・!」


「あらホント・・・リオン君の言った通りね!」
玄関の奥では、烈と豪の母親、良江が感心している。
良江いわく、玄関先で良江と話していたリオンが、不意に「烈が帰ってきた」と言って戸を開けたらしい。

烈は、戸に貼ってある すりガラスから外の様子をうかがう。
人が立っているのは分からなくは無いが、よほど間近に立たないと、それが誰かを判別するのは難しそうだ。

「どうして僕だって分かったの?」
考えても分からないので、リオンに問い掛けてみる。
するとリオンは、さも当たり前というように、あっけらかんとした表情で、こう答えた。
「そりゃ分かるさ!烈だからな」

・・・・?
僕だから??


「答えになってないよ、リオン」
「そうかー?」

階段を上っていく二人のやり取りを、良江は下で微笑ましそうに見送っていた。

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