随分回り道をして、ようやく家の前にたどり着いたとき、烈は目を丸くした。 玄関の脇に立てかけてある それは、彼が「ジェットローラー」と呼んでいるもの。 『リオンが家に来てる・・・!』 鼓動がどんどん早くなって、顔が一気に赤面する。 遠く離れている時とも、隣で話している時とも、全然違う感情。 玄関の戸を開ければ、リオンがいるかもしれない。 それとも、2階に上がって部屋のドアを開ければ? リオンの姿をその目に捕らえる瞬間に、どうして、こんなにも心が揺らされるのだろう。 その時、玄関の戸の開く大きな音が、烈の意識を引き戻した。 その瞬間は、いつも唐突に、予想を裏切って訪れる。 それは、初めてリオンと出会った時から変わらない。 中から出てきたリオンは、差しこむ夕日に目を細めながら、烈に微笑みかけた。 「久しぶりだな、烈・・・!」 「あらホント・・・リオン君の言った通りね!」 玄関の奥では、烈と豪の母親、良江が感心している。 良江いわく、玄関先で良江と話していたリオンが、不意に「烈が帰ってきた」と言って戸を開けたらしい。 烈は、戸に貼ってある すりガラスから外の様子をうかがう。 人が立っているのは分からなくは無いが、よほど間近に立たないと、それが誰かを判別するのは難しそうだ。 「どうして僕だって分かったの?」 考えても分からないので、リオンに問い掛けてみる。 するとリオンは、さも当たり前というように、あっけらかんとした表情で、こう答えた。 「そりゃ分かるさ!烈だからな」 ・・・・? 僕だから?? 「答えになってないよ、リオン」 「そうかー?」 階段を上っていく二人のやり取りを、良江は下で微笑ましそうに見送っていた。 |