「空と憂鬱」 page 3

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部屋に入ると、帽子をフックにかけ、ランドセルを下ろして教科書やノートを整理する。
てきぱき作業をこなす烈を眺めていたリオンは、急にクスクスと笑い出した。

「?どうしたのリオン」

「うん・・・豪だったら、帰ってきたらランドセルも何もポイポイってその辺に置きっぱなしなんだろうなって思って」

当っているので、烈も笑い出す。
今頃豪は、くしゃみをしているだろう。

笑っていたりオンは、ふっと真面目な顔になって烈を見た。
「烈は、いつもきちんと整理整頓してるんだな!俺、烈のそういうところ好きだよ」

にっこり微笑みかけられて、烈は瞬間的に耳まで真っ赤になってしまった。
誉められる事は、そう珍しい事ではない。
本人にその意識は無いが、『誉められ慣れている』烈は、たとえ両親や先生や友達に どんなに誉められても、言葉を返せないほど動揺してしまう事は無い。
そんな烈を これほど動揺させるくらい、リオンの言葉は あまりにも正直で率直だ。
そもそも、自分のどんなところが好きだとか、自身でも あまり考える事が無いし、面と向かって誰かに言われた事も無い。

困ってしまうくらい、真っ直ぐで純粋なリオン。
でも、それが烈には嬉しい。

「烈〜、ケーキとジュース持ってきたよ!」
二人がマシンのメンテナンスをしていると、良江がニコニコ顔でオヤツを運んできた。
今日のオヤツはショートケーキとオレンジジュース。
イチゴが大好きなリオンは、嬉々として良江からケーキの皿を受け取っている。
「じゃあ、仲良く食べるんだよ!」
おいしそうにケーキを食べ始める二人を嬉しそうに見ながら、良江は帰っていった。


リオンは上に乗っている大きなイチゴを お楽しみに取っておいて、ケーキをほおばる。
あっという間に消えていくケーキを見て、まだ半分も食べていない烈は目を丸くした。
「凄いスピードだね・・・あ!」
リオンの顔に目をやると、口元に生クリームが付いている。
「リオン・・・口のとこ、クリーム付いてるよ」
烈は笑いをこらえながら指摘した。

「え?ど、どこに?」
リオンは慌てて あちこち触るが、クリームに手が届かない。
豪そっくりの その仕草に、烈は いよいよ笑いをこらえきれない。

「ほら・・・ここだよ」
身を乗り出して、リオンの肩に手をかけ、もう片方の手で そっとクリームを拭う。
その時、何気なくリオンと目を合わせた烈は、弾かれたように体を離した。

「?どうしたんだ、烈・・・?」

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