「空と憂鬱」 page 6

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「えっと・・・じゃあ・・・ちょっとだけ・・・いいか?」

少し遠慮がちに おねだりをするような仕草に、背筋がくすぐったくなる。
リオンは、母性本能をくすぐるタイプなんだろう、と烈は思う。
烈の面倒見のいい世話焼きの性質は、どうにも、リオンのこの性質に弱い。

烈は小さく うなずくと目を閉じた。


暖かい空気で、リオンが近づいてくるのが分かる。
頬に唇が・・・触れた・・・?
次の瞬間、リオンは大急ぎで離れると、顔を真っ赤にして背中を向けてしまった。

まるで風が頬をかすめたような、ほんの一瞬のキス。
それでも・・・

「ありがとう、リオン」

烈は、相変わらずそっぽを向いたままの照れ屋な少年に微笑みかけた。



日もすっかり沈んで、烈はリオンを見送りに玄関まで出てきた。
リオンはさっきから、やたらニコニコしている。

『今日は凄い進展だな、烈にキスしちゃったんだもんな〜・・・やったぜ!』

思わずガッツポーズをしてしまったリオンに、烈が声をかけた。

「どうしたの?リオン、嬉しそうだね?」

答えるに答えられないリオンは、困って辺りをきょろきょろ見回した。
すると、すっかり暗くなった曲がり角の街灯の明かりの下に、噂の二人を見つけた。
あれから1時間以上たつのに、同じ場所で、同じ調子で喋っている。

「豪のヤツ、まだブレット君と話してたのかぁ・・・」

烈が呆れ気味に声をかけようとした瞬間、ブレットが豪を抱き上げ、唇を重ねた。
真っ赤になった豪を そっと降ろすと、その頭を一なでして、ブレットは去っていった。

「あ、あの二人・・・進んでるな・・・」

小さくなっていくブレットの背中に、怒りながら何か叫んでいる豪をリオンはぼんやり眺めていた。
隣で烈が小さく肩をすぼめる。
やがて、二人はゆっくり歩き出した。


「豪は豪、僕は僕・・・自分のペースで歩けばいいよね」

それは、きっと独り言だったに違いない、烈の呟き。
ジェットローラーを引くリオンは、前を向いたまま、同じように呟いた。

「俺・・・その隣を歩いてもいいかな・・・?」


淡い月の光の下、まるで息遣いのような自然さで、二人は手をつないでいた。


おしまい!

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