「Odore dell' Angelo」 page 2

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カルロの部屋の前までやってきたミハエルは、走ったために乱れてしまった髪と服を手早く整えた。

ミハエルが外見を気にかけ始めたのは、カルロに会うようになってからだ。
身なりは、いつも きちんとしているミハエルだが、それは習慣であり、誰かの ためではない。
人にどう見られるか、どう思われるかなど、考えた事さえなかった。

クローゼットから洋服を引っ張り出してきて あれこれコーディネイトしたり、髪を念入りに整えたり・・・
それがカルロ一人のためである事も、そして自分自身の変化にさえも、ミハエルは気がついていない。


「カルロー、いないの?ねー、カルロってばー」

ドアを数回ノックする。
返事は無い・・・。
もしかすると、途中で行き違いになったのかも知れない。
けれど、ミハエルの直感が、ここに何かを感じていた。

数分後、再びドアをノックし、声をかける。
その時、ノックの音と自分の声の合間に、かすかな声が聞こえてきた。

「うっせーな・・・・いるよ」

それは、確かにカルロの声・・・でも、少し様子がおかしい。

ミハエルは、思い切って部屋の中に入ってみた。


無造作に脱ぎ捨てられたロッソストラーダのユニフォーム。
ディオスパーダは、テーブルの上。
そして、カルロは・・・

「ゴホゴホッ」

奥のベッドから、咳き込む声が聞こえる。
ミハエルは脇に歩み寄ると、そっと覗き込んでみた。

「か、カルロ・・・・どうしたの?」

布団の中には、真っ赤な顔で唸っているカルロがいた。


「それで?濡れた髪も体も拭かずに、そのまま寝ちゃったんだ?・・・風邪ひいてトーゼンだね!」

前日、カルロは地元のレースに出場していた。
天気は、あいにくの雨。
ぶっちぎりで優勝し、降り止まない雨の中 傘も差さずに びしょ濡れで帰宅。
上着を脱ぎ捨て、ディオスパーダのメンテを済ませ、そのままベッドに倒れこむように就寝。
翌日 目が覚めたら、高熱で動けなくなっていた、らしい。

「ホント、呆れちゃうよ」

言葉とは裏腹に、ミハエルは泣き出しそうな顔でカルロを見つめていた。

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「Odore dell' Angelo」・・・Smell of Angel(伊)