「神々の庭」 page 3

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しばらくして・・・
短くなったタバコを灰皿に放り込んで、加賀はむくりと起き上がった。

「随分静かだな・・・はかどってるか?進藤」

プリントを見る。
まだ一枚目も終わっていないようだ。
怪訝そうにヒカルの顔を覗き込んでみると・・・
ヒカルは机に向かったままで、うつらうつらと眠っていた。
加賀には見えないものの、ヒカルの隣では、佐為が必死にヒカルを起こそうとしている。

加賀は、しばらく何も言わずにヒカルの寝顔を眺めていた。
そして、ふっと頬を崩すと、

「いってーっ!な、何すんだよ加賀ー」

加賀はヒカルの耳を掴んで思いっきり引っ張りあげた。
飛び起きたヒカルは、慌てて加賀の手を振り払うと、赤くなった耳を抑えた。

「勉強教えてもらいに来て、寝てる奴があるか!」

「だ、だって・・・昨日、夜中まで碁打っててさ、あんま寝てないんだもん」

そう言って、ヒカルは佐為の方を軽く睨んだ。
昨日、佐為が『もう一局だけ!』とせがむものだから、寝る前に軽く対局・・・と思って引き受けたら、
その一局をたっぷり楽しもうとした佐為に長考されて、夜更かしする羽目になったのだ。
ヒカルの冷たい視線に、佐為は困ったように加賀の背中に逃げ込んだ。

「夜中までって・・・誰と打ってたんだよ?」

自分の後ろに隠れている佐為の事など知る由もない加賀は、驚いたようにヒカルに尋ねた。
ヒカルは一瞬まずったという顔をしたが、誤魔化すのは手馴れたもの。

「違う、間違い!棋譜並べてたんだよ、棋譜」

それを聞いて、加賀は感心したように微笑んだが、すぐに厳しい表情になって、
へらへらしているヒカルの頭を鷲掴みにして机に向かわせた。

「それはそれ、これはこれ!終わるまで一睡もさせねーからな」

腕組みをして踏ん反り返った。
どうやら今度は、しっかりと見張っている事にしたらしい。

「わ、分かったよ〜」

加賀の厳しい監視の元、ヒカルは渋々プリントの続きを始めた。

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