「わぁ!お寿司だ!!」
テーブルの上に置いてある寿司を見て、ヒカルは目を輝かせた。
佐為も珍しげに覗きこんでいる。
『これオスシって言うんですか?ヒカルの家では出た事ないですね?』
『こんなゼータクな物、熱でも出さなきゃ取ってもらえないっつーの』
加賀は冷蔵庫から缶ビールを二つ取り出すと、一つをヒカルに投げた。
ヒカルは、とりあえず受け止めたが、『Beer』の文字を見て、仰天する。
「お、オレ、お酒なんて飲めないよ!」
ヒカルがそう言うのが分かっていて、あえてからかってみせるのだ。
確信犯の加賀は、突き返された缶ビールの代わりに烏龍茶の缶を渡して笑った。
からかわれると悔しいし、腹が立つ。
それなのに、まるで いたずらっ子のような、この笑顔を見ると、
ほっとしたような、嬉しいような気持ちになる。
それは、加賀にだけ・・・加賀の笑顔にだけ。
何故だろう?
ヒカルは、お返しに べーっと舌を出すと、一足先に席についた。
加賀も席について、二人で寿司を食べ始めたのだが・・・
「あっ!ねぇ加賀、オレさ、イクラ苦手なんだよ・・・トロと交換しよ、トロと!」
「あ?コラ、勝手に話進めてんじゃねぇ!イクラは好きだから貰ってやるけど、お前にはカッパ巻きで十分だ!」
「やだ!カッパ巻きなんていらな・・・ああーっ!イクラ勝手に取った!!」
「くれるっつったじゃねーか!」
食事の席でも、相変わらずの二人と、その二人の口にポンポン入っていく寿司を、
テーブルの端から ちょこんと顔を出して、佐為は羨ましそうに眺めていた。
『ああ、楽しそう・・・それに、オスシって、どんな味がするんでしょうねぇ?』
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