・・・と言う事を豪は烈に説明したわけだが、
豪のたどたどしい口調では、細かい経緯を説明することは出来ない。
『ホテルに行ってみたが、ミーティングをしていたので帰ってきた』
とだけ理解した烈は、最初、豪の ただならぬ様子に心配していただけに、
拍子抜けしたように笑った。
「なーんだぁ・・・じゃあ今からもう一度行けばいいじゃないか!ミーティングも終わってる頃だよ、きっと」
「駄目だよっ!」
飛び起きた豪に強い調子で言い返されて、烈は驚いて仰け反った。
何が駄目だと言うのか・・・
そう聞き返してみると、豪は俯いて唇をかんだ。
「俺・・・ヤなんだ・・・怖いんだ・・・会いに行って、あんな顔されたら・・・」
「ブレットに嫌われるのが、メーワクだって言われるのが・・・怖い」
ブレットの『あんな顔』が、どのような顔なのか、烈には分からない。
けれど、嫌われたくないから会いにいけない・・・その気持ちは分かる。
誰かに嫌われたくないと心から願う、その理由は一つしかない。
もっとも、豪は、気がついてはいないが。
そして、もう一つ・・・大事な事に気がついていない。
「ブレット君が豪を迷惑に思うはず無いよ」
「例え口では、そう言ったとしても・・・絶対に、豪を拒絶したりしない・・・少なくとも豪だけはね」
メーワクだって言っても迷惑じゃない?
きょぜつ?
自分だけ?
全然分からない。
ブレットの事、ブレットの心だって、何一つ分からない。
それなのに・・・・
「わかんねーよ!何だよ、烈兄貴はブレットの事なんでも分かってるような事言ってさ!」
「もういーよ!出てけっ!!」
豪は泣きながら、手につくものを烈に投げつけた。
烈は慌てて部屋から脱出すると、短気で鈍感で泣き虫な弟を思って、ため息をついた。
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