「Let me hold you,Baby」 page 4

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豪が泣き疲れて眠ってしまい、しばらく経った頃、烈は個一時間ほど前に豪が訪れたホテルにいた。
しばらくドアの前で思案していたが、意を決したように数回ノックする。

「レツ・セイバ・・・珍しいな、お前が俺を訪ねてくるなんて」

努めて平静を装っているが、烈を出迎えた人物の顔には、隠し切れない動揺の色が浮かんでいる。
いつもなら元気よく自分を訪ねてきてくれる少年が、今日に限って現れないのだから無理もないが・・・
その原因が自分にある事を、ブレットは知らない。

外向けの笑顔を作ったブレットは部屋の奥へと促したが、烈はドアの前から、それ以上中には入らない。
後で余計な誤解をまねくような行為は避けようという考えがあったからだ。

ブレットは冷蔵庫からミネラルウオーターを一つ取り出した。
何か飲むかと尋ねられた烈は、首を振って断り、本題を切り出した。

「豪に会いに行ってやってほしいんだ」
「豪は君に会いたがってる・・・でも、君に嫌われるのが怖くて・・・」

ミネラルウオーターを飲むブレットの手が止まる。
烈の言った事の意味ではなく、あの豪が何故、唐突にそういう感情を持ったのかが、理解できない。

その後、烈に豪の行動を聞いて、ようやく事のあらましを理解したブレットは、口惜し気に舌打ちした。
豪がその場にいることが分かっていたら、エッジに対しても、その場だけは笑顔であしらい、後でどうにでも処置したものを。
今回の事は不可抗力に違いないが、ブレットは自分の詰めの甘さが豪を傷つけたのだと思った。

豪は知らない。
自分が、どんなに特別な目で見つめられているのか。
例え叱る時でさえ、豪を見つめるブレットの瞳の奥には、豪を思いやる優しさがある。
それは、常に一線を引き、他人を冷たく見つめる普段の瞳とは、全く異質のものだ。


「・・・分かった」
「保護者の許可が出たのなら、俺も遠慮なく、やらせてもらうよ・・・色々支度があるんでな、帰ってくれ」

承諾を得られて烈が喜んだのもつかの間、恐るべき捨てセリフを残して、ブレットは烈を部屋から追い出した。
どうやらブレットに火をつけてしまったらしい。
けしかけた烈は今更ながら、自分の行動が本当に良かったのかどうか、不安になってしまった。

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