突然の事に、さすがのブレットも状況をよく飲み込めない。
半ば豪に引っ張られるようにして、おずおずと腰を上げた。
「ヒコーキだよ、ヒコーキ!持ち上げてクルクル回すヤツ・・・早く、早くっ!!」
駄々っ子のようにせがまれて、ブレットは言われるままに、豪の体を両手で抱きかかえた。
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ブレットの腰の丈までも無い豪の体は、片腕でも支えられそうなほど軽い。
高く持ち上げ二、三度 回してやると、豪が歓声をあげた。
「すっげー、すっげー!なーなーブレット、『うちゅうゆうえい』って、こんな感じかなぁ?」
あまりにも意外な豪の言葉に、ブレットは思わず手を止めてしまった。
豪が不満気に頬を膨らませる。
「何だよ、止めんなよー!せっかく面白いとこなのにっ」
「あ、ああ・・・」
ブレットは慌てて回し始めた。
戸惑うブレットにはまるで気づかずに、豪は嬉しそうに手足をばたつかせている。
「俺なーテレビで見たんだ!こうやってフワフワ浮いてるんだぜ・・・すげーなぁ・・・ブレットもあんな風に、うちゅうゆうえいするんだなっ!」
どうして・・・
どうしてゴーは俺の夢を、夢がかなう事を、こんなにも信じてくれるのだろう。
豪はアストロノーツになる事の困難さを、何となく分かっていても、本当に理解しているわけではない。
豪の発言は、それゆえの『無責任』なものに違いない。
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けれど・・・余計な思惑や期待など無く、ただ、『信じられる』のは・・・悪くない。
ゴーを見ていると、ずっと遠い昔、夢がかなう事をただ『信じて』いた頃の自分を思い出せる。
忘れかけていた大切な事を・・・。
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