誰かが廊下を歩く音・・・
それが聞こえるたびに、何度胸を高鳴らせ、
遠ざかっていくたびに、何度落胆しただろう。
エーリッヒは・・・まだ、来ない。
別に、エーリッヒを待ってるわけじゃない。
顔を合わせるのが気まずいから部屋を出てきただけだし、
書置きだって、エーリッヒが心配しないようにと思って書いただけだし、
第一・・・
「・・・やめた!」
シュミットは大きく息をついた。
いくら頭でごちゃごちゃ考えたところで、結局 自分はエーリッヒを待っているのだ。
いい加減に逆らうのはやめて、感情に任せることに決めた。
待つのは嫌いだが・・・エーリッヒを待つのは―――
「コンコン」
深く考え込んでいたため、ずっと待っていたはずの足音に気がつかなかった。
不意にドアをノックされ、ビクンと体が跳ねる。
「シュミット・・・」
エーリッヒが、様子をうかがうように入ってくる。
遠慮しているのか、ドアの前から こちらには来ない。
「な、何か用かエーリッヒ!私はもう・・・寝るところだぞ」
エーリッヒが来たら何を話そうか、あれこれ考えていたはずなのに・・・
いざとなると、こんな、可愛げの無いセリフしか出てこない。
情けなくて、シュミットは本当に布団をかぶって寝てしまいたくなった。
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