「Leichte Hand」 page 5

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エーリッヒは、ふっと頬を緩めた。
繊細すぎて掴み所が無い。複雑すぎて持て余してしまう。
多くの人間にとって、シュミットはそうであるに違いない。
でも、自分は他の誰よりもこの人の傍にいて、いつでも共に歩いてきた。

「まだ怒ってるんじゃないかと思ってな」
エーリッヒは さらりと核心に触れる。
普段の彼からは想像に難いのだが、エーリッヒには、シュミットにだけ見せる強気で強引な一面がある。
けれど、自分からは切り出しにくかったシュミットにとっては、そのストレートな発言はありがたいものだった。

シュミットが顔を上げたのに合わせて、エーリッヒが静かに歩み寄って来た。
エーリッヒが傍にいる雰囲気の心地よさ・・・

「私は・・・そんなに、いつも怒っているか・・・?」

『エーリッヒの声をもっと聞きたい』
その事に気を取られて、うっかり心で思っていたことを口にしてしまった。
シュミットは胸元をぎゅうっと掴んで俯いた。


「うーん・・・まぁな!」

「貴様っ!私を怒らせに来たのかっっ?!」

さすがに今度はストレート過ぎた。
シュミットは腹が立つやら呆れるやらで、すっかり頭が混乱して、掴みかかりそうな勢いでエーリッヒにくってかかる。
しかし、エーリッヒは慌てる風もなく、けろりとした顔で言葉を続けた。

「オレはシュミットが好きだ!怒ってるシュミットも、どんなシュミットも・・・好きだ!」

「な・・・」

『言葉が無い』とは、まさに今の自分の状況を言うのだろう。
シュミットは今まで考えていたことも、今言いかけていたことも、何もかも真っ白になって、ただただ固まってしまった。

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「Leichte Hand」・・・Gentle Hand(独)