不意にカルロの瞳が殺気を帯びた。
尖った視線を向けた先には、柱の影で様子を伺う数人の少年がいた。
「従兄弟達だよ・・・遊びに来てるみたい」
玄関ですれ違った後、ミハエルがぽつりと言った。
淡々と語る仕草に、ミハエルが彼らに好印象を持っていないのが分かる。
カルロも瞬間的に気に入らないと思った。
すれ違いざまに彼らがカルロに見せた顔には、明らかに嘲笑が浮かんでいた。
「お前だろ?ミハエルが連れて来たイタリア人って」
玄関で見せた胸の悪くなるような笑みを浮かべて近づいてくる3人。
カルロは無表情に、けれど瞳の殺気は緩めることなく、彼らを見る。
「お前スラムに住んでるんだってな」
「孤児院にいたらしいじゃねーか!」
ご丁寧にも、カルロの素性を調べたらしい。
「お前らは臭いで分かるんだよ!貧乏人の臭いでな!」
「ああ、プンプン臭うぜ!せっかくの薔薇の香りが台無しだな」
「お前みたいな奴にウロウロされると、ヴァイツゼッカー家の品位が下がるんだよ!」
彼らはあらゆる言葉で中傷するが、カルロは眉一つ動かさない。
この程度の言葉は聞きなれているし、もっと悪辣な言葉を吐きかけられた事だって何度もある。
それに・・・こんな奴らでも一応、ミハエルの従兄弟だ。
今は手は出さないでおいてやる・・・。
無反応なカルロ。
しかし、その眼光は鋭さを増して、身のほど知らずなお坊ちゃまたちを少しずつ圧迫していく。
「な、何だよ・・・暴力を振るうつもりかよ?」
「び、貧乏人はすぐ暴力に訴えるからなっ」
もはや蛇に睨まれたカエル状態の3人。
その言葉も、負け惜しみにしか聞こえない。
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