「Form des Gluckes」 page 4

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「さ、あの子のところに行ってあげなさい」

大きな手がミハエルの背中を優しく押した。
ミハエルは小さくうなずくと、カルロの元へ駆け出した。



今まで誰かを殴って後悔した事なんてなかった。
もちろん、あいつらを殴った事を後悔してるわけじゃない。
でも・・・ミハエルがその事を知ったら・・・

アイツは、俺を拒絶するだろうか・・・・・?

心の奥底で、何かが きしむ悲しい音・・・耐えがたい苦痛。
こらえようと きつく握り締めた拳から血が滲み、まるで涙のように流れ落ちて花弁を濡らした。



ドンッ!


突然、何かがカルロにぶつかってきた。
僅かな鈍い痛みの後に伝わってきた、よく知った香りと温もり・・・。

「ミハエル・・・どうした?」

頭をカルロの胸に押し当てたまま、ミハエルは手を回して、ぎゅっと しがみついた。

「見てたの・・・か・・・」


しばらく沈黙が続いたあと、回した手はそのままで、ミハエルが顔を上げた。

「ぼく・・・暴力は嫌い!でもね・・・生立ちで人を蔑んだりする人は、もっと嫌いだよ!」

ミハエルは視線を落とすと、血で塗れたカルロの手を、ためらうことなく両手で包みこんだ。
雪のように白いその指が血に汚れる・・・
カルロは とっさに手を引こうとしたが、ミハエルはそれを許さず、取り出したハンカチでそっと傷口を覆った。


一通り手当てをすると、ミハエルがプンプン怒りながら言った。

「カルロが殴らなくても、ぼくが殴るよ!」

大げさに巻かれたハンカチをいじっていたカルロは、目を丸くした。
ミハエルの口から出たのは、まったく想像していなかった、むしろ正反対とも思える言葉。
驚くと同時に、さっきは痛んだ胸の奥が、少し くすぐったくなった。

「お、お前が?・・・そんなバイオレンスには見えないぜ?」

カルロが全く信じられないといった顔をしているので、ミハエルは不満気に頬を膨らませた。

「ぼく強いんだよ!試してみる?」
「ぶっ・・・」

事の真偽はともかく、ミハエルの大真面目な顔が可笑しくて可笑しくて、カルロはたまらず吹出してしまった。

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「Form des Gluckes」・・・Shapes of Happiness(独)