シャツをたくし上げると、やや乱暴に その下の肌をまさぐる。
その手の温度の高さに王天君は少し怪訝そうな表情をするが、抵抗する素振りはまるで無い。
「聞仲よぉ・・・てめぇ、頭の固い仙人じゃなかったのかよ・・・鬼畜なシュミあったのか?」
アクセサリーが引っかかるのを嫌って自らシャツを脱ぎ捨てた王天君は、薄笑いを浮かべた。
この状況さえも楽しんでいるのだろうか?
その大きな瞳は 鏡の様に全てのものを映しそうだが、奥にある彼の真意は、決して見通すことができない。
しかし、聞仲には、王天君の問いかけに答える余裕は無かった。
「・・・っ」
熱を持たない王天君の肌が僅かに汗ばむ。
その様子は、ひどく奇妙なものに見えた。
冷たい体に触れているうちに、少しずつ自らの体を支配していた熱が冷めていく。
それと共に、聞仲は冷静な思考を取り戻していた。
「・・・どうせ答えねぇだろうけど・・・何で俺を抱くんだ?」
「誰かの代わりか?それとも誰かを忘れるためか?」
それは王天君の意図したところではないかも知れないが、
聞仲は彼の言う『誰か』に、それぞれ別の人物を思い浮かべていた。
遠い昔に亡くした女性。
そして、道を違えた友。
彼らに出会うことが定めだったとしたら、彼らを失うこともまた、定められたことなのだろうか。
聞仲は軽く首を振ると、顔を上げた。
目に入った王天君の唇。
そこに笑みは無い。
「・・・貴様の死人のように冷たい体を抱いていると、力の使いすぎで上がった体温が下がるからだ」
一言だけ答えると、折れそうに細い王天君の腰を引き寄せた。
「ふぅん・・・ま、俺にはどうでもいいことだがな」
|
|