「こんなところで会うとは、奇遇でげすなぁ!」 海外旅行は日常茶飯事だが、旅行先でWGPのライバルチームのメンバーに出会うという偶然は初めての事。 心配する彦佐をよそに、藤吉は無防備にルキノに歩み寄っていった。 ルキノは後ろの様子を少しうかがうと、突然、藤吉を抱きしめた。 「な、なななな何するんでげすかっ?!」 「っせーな・・・イタリアの挨拶だよ」 あたふたしている藤吉をポンと離すと、ルキノはそっぽを向いた。 「捕まえたぞ!このスリめ!!財布を帰しやがれっ」 突然、走ってきた男がルキノに飛びかかると、馬乗りになって殴りつけた。 ルキノは男を突き飛ばすと、血の混じった唾をはき捨てた。 「俺がスリだって?証拠でもあるのかよ?」 「財布を持ってるはずだ!」 男はあちこち探すが、一向に財布は見つからない。 焦る男を尻目に、ルキノは薄笑いを浮かべている。 二人のやり取りをぽかんと見ていた藤吉は、ふと胸のあたりに違和感を感じた。 懐に手を入れてみると、見なれない財布が入っている。 藤吉は、その財布を手に、いまだにルキノを調べている男に歩み寄った。 「あのー・・・捜してる財布って、これじゃないでげすか?」 「な、何やってんだバカ!」 ルキノが止めたが、すでに手遅れだった。 「そいつは俺の財布だ!それをどこで?」 「わての懐に入っていたでげす!不思議なこともあるもんでげす」 ルキノは頭を抱えた。 スリはもちろん彼。 逃げる途中で藤吉とぶつかるというハプニングはあったものの、それを逆手にとって、うまく財布を隠したつもりだった。 こいつが余計なことさえしなけりゃ、見つからなかったのに・・・! 「じゃあ、テメーが盗んだんじゃね―か!」 「ええーっ?!わ、わては知らないでげす!ひ、彦佐!何とか言うでげすっ」 藤吉は慌てて彦佐の後ろに逃げ込んだ。 藤吉を捕まえようとする男を、彦佐は必死で押し戻す。 「何かの間違いです!藤吉お坊ちゃまは、人様のものを盗んだりなどいたしません!!」 不意に、ルキノが藤吉の手を取って走り出した。 「こ、今度は何でげすかー?!」 「うっせー!逃げるんだよっっ!!」 |