「Dolci Giorni」 page 3

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10分は走っただろうか。
人影もまばらな通りまで来たところで、ルキノは藤吉の手を離した。

「出せ!」
「え?何をでげすか?」

「財布だよ、サ・イ・フ!さっきの財布出せってんだよ!!」

藤吉は言われるままに、財布を持っていたほうの手をルキノに差し出した。
ルキノが怪訝そうな顔をするので、藤吉も改めて その手に目をやった・・・
財布が無い。

「どうやら逃げる途中で落としたみたいでげす」
「な・・・何だって?!」

ルキノはヘナヘナと座り込んだ。

藤吉は しゃがむと、へこんでいるルキノの顔を覗きこんだ。
ルキノは、恨めしそうに藤吉をにらみ返す。

「・・・・何だよ」
「お腹空いてないでげすか?」

ルキノの返事を待たずに、藤吉は立ち上がって、周りを見まわした。
めぼしい料理店を見つけると、しぶしぶ立ち上がったルキノの手を引いた。

「昼食でも一緒にどうでげすか?」


「・・・俺は払わねーぜ!っていうか、金もねーしな」
ルキノは、出された料理を片っ端から平らげていく。
彼にとって、本当に久しぶりの豪華な食事だった。

「わてのおごりでげす!」

藤吉はのん気にニコニコしている。
しかし、ルキノはどうしても納得がいかないことがあった。

「お前・・・俺のこと恨んでないのか?俺はお前のマシンを壊したんだぜ?」

日本で開かれた第一回WGP。
タワーサーキットで行われた、ビクトリーズ対ロッソストラーダ戦で、ルキノは藤吉のマシンを破壊している。
藤吉は、その時の様子を思い出しているのか、少し顔を曇らせていたが、すぐに笑顔に戻って顔を上げた。

「過ぎたことをいつまでも恨んでも仕方ないでげす!今日はわてを助けてくれたから・・・お礼でげす!」
「べ・・つに・・・・助けたわけじゃねーよ!俺は・・・・」

藤吉を連れて逃げたのは、財布を取り返したかったからに他ならない。
スリがルキノであることも、財布を隠すために利用されたことも、藤吉はまるで気がついていない。
世間知らずな金持ちのお坊ちゃまを騙して利用する・・・いつも、やっている事・・・。

ルキノの手が止まっているのを見て、藤吉が新たに運ばれてきた料理をすすめた。
「遠慮しないで食べるでげす!」

ルキノは藤吉の手から料理の皿をひったくると、あっという間にかき込んだ。
「遠慮なんかするかよ!金持ちは嫌いだが、おごってくれるってんなら、話は別だからな!!」

藤吉はにっこり微笑むと、ボーイを呼んで、どんどん料理を頼み始めた。
山積みになっていく料理を目の前にして、さすがのルキノも、だんだん不安になってきた。

「お、おい・・・いくらなんでも、ちょっと多すぎるんじゃ・・・」
「さー、じゃんじゃん食ってくれでげす!!」

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「Dolci Giorni」・・・Sweet Days(伊)