頭がぐるぐる回る・・・それとも、俺の周りが回ってんのか? 腹一杯って経験は初めてだが、あんまりいいもんじゃねーかもな。 結局ルキノは、山のように出された料理を全て平らげた。 明日の食費のめども たたないのに、目の前にある料理を食べずに放っておくなどということは、到底出来なかったのだ。 けれど、食べなれない量を一気に詰め込んだ彼の腹は、一杯どころの状態ではなかった。 真っ青な顔で苦しそうにしているルキノを見て、藤吉が心配そうに寄ってきた。 「だ、大丈夫でげすか?何だか顔色が悪いでげすよ」 ルキノはコップの水を一気に飲み干した。 勢いをつけて立ち上がると、藤吉に背を向けて歩き出した。 「何でもねーよ!メシも食ったし、俺は帰るからなっ・・・」 「ルキノ?!」 フラフラと歩いていたルキノの体がぐらりと傾き、大きな音を立てて倒れこんだ。 藤吉は仰天して、急いで駆け寄って声をかけたが、ルキノはピクリとも動かない。 「ルキノ!ルキノ!!・・・ど、どうしようでげす―――!」 まるで日溜りの中にいるような、空をフワフワと漂っているような・・・そんな夢を見ていた。 ゆっくり目を開ける・・・そこは、見知らぬ豪華な部屋の、これまた豪華なベッドの上だった。 ルキノは体を起こすと、きょろきょろと周りを見まわす。まだ状況がよく把握できない。 どうして俺は、こんなところにいる・・・? ふと視線を落とすと、ベッドの脇で眠り込んでいる藤吉の姿があった。 「そう・・・か!俺は確か、あの料理屋でぶっ倒れて・・・」 「ん・・・・」 その時、藤吉が目を覚ました。 寝ぼけ眼でルキノの姿を捉えると、ホッとしたように微笑んだ。 「よかった・・・死んだのかと思って心配したでげす!」 「食い過ぎくらいで死んでたまるかよ!・・・それより、ここどこだ?」 そこは藤吉がローマでいつも泊まっている一流ホテルのスイートルーム。 ルキノが倒れた後、藤吉は大慌てで彦佐を呼びつけ、彼をここに運んだのだ。 |