「Dolci Giorni」 page 5

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どうにも、フカフカ過ぎて落ちつかない。
豪華なベッドの感触に慣れないでいたルキノは、ふと窓の外に目を向けて仰天した。
藤吉と料理屋に入ったのは、確か昼過ぎ。しかし今は、すっかり夜の帳が下りている。
「もう夜じゃねーか!オレは帰るぜ」

慌ててベッドから起きようとするルキノを、藤吉が止めた。
「だったら、今日は泊まっていくといいでげす!」

「なっ・・・何言って・・・?!」

ルキノは顔を強張らせた。藤吉の言葉が理解できない。
ちょっと助けた(誤解だが)だけの自分に食事をおごり、あまつさえ部屋に泊めようとする。
過去に酷い仕打ちをしたはずの自分に、こんなにも、優しく接する。

底無しのバカで、とことんお人よしのお坊ちゃまなのか・・・
それとも・・・・もっと、違うのか・・・・・・?


「あいてて・・・」
立ち上がろうとした藤吉が、膝を押さえて痛みを訴えた。
両方の膝に赤い痕が残っている。
ルキノは、はっとした。

「お前・・・ずっと・・・俺の傍に・・・」
「え?何でげすか??」

ルキノは顔をそむけると、ベッドに寝転がった。

こいつ、何時間も、ずっと俺の横で、膝をついて、ずっと俺の看病をしてやがったのか。
そう言えば、誰かに看病してもらうなんて事・・・初めてかもしれないな。


「まぁ、テメーのせーでぶっ倒れたんだからな!・・・ここ、居ごこちいーし、泊まってってやるよ」

ちょっと、嘘をついた。
嬉しそうな藤吉の笑顔が、何だか妙に、くすぐったかった。



「ルキノ―・・・もう寝たでげすか?」

パジャマ姿の藤吉が、隣の部屋から様子を見に来た。
ベッドにルキノの姿は無い。
藤吉は部屋の中へと歩きながら、ルキノの姿を探した。

「あ、あれ?どこ行ったんでげすか?!」
「・・・・ここだよ」

声のしたほうを振り向いてみると、部屋の隅っこでシーツに包まっている不機嫌そうな顔があった。
藤吉が部屋の明かりをつけたので、シーツのダルマは、さらにバツが悪そうな顔をした。

「な、何やってるんでげすか?」
「っせーな・・・どうも柔らかすぎるベッドってのは寝心地悪くてよ」

ルキノがいつも使っているベッドは、板の上に薄いシーツをかけただけの粗末なもの。
その硬さに慣れてしまっている彼には、柔らかさがかえって邪魔に感じられたのだ。
広すぎる部屋も、どうにも落ち着かない。

藤吉はソファーの上に置いてあるクッションを一つ抱えると、モコモコしているダルマに歩み寄った。

「んだよ?」
「わても一緒に寝てもいいでげすか?」

またしてもルキノの返事を待たずに、藤吉はシーツにもぐりこんだ。
ルキノの隣に顔を出すと、目を輝かせた。
部屋の隅っこから見る景色。それは、藤吉にとって初めて見る世界だった。

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「Dolci Giorni」・・・Sweet Days(伊)