「・・・変な髪形」 ルキノは、藤吉の頭の天辺の尖がった癖毛を、指先でつまんで遊んでいた。 少し離れていたはずの距離が、いつの間にか縮まって、今は寄り添うように座っている。 くすぐったそうにしていた藤吉は、ふと思いついて顔を上げた。 「ルキノはF1好きでげすか?」 F1と聞いてルキノはパッと顔をほころばせた。 もちろんレース場に行ったりは出来ないが、街頭テレビでの観戦は欠かしたことがない。 彼の好きなチームは、カルロやミハエルと同じ、イタリアの赤い跳ね馬フェラーリ。 嬉しそうにフェラーリの話しをする饒舌なルキノに、藤吉は嬉しそうに微笑みかけた。 「良かった!F1が好きなら、きっとミニ四駆も好きでげす!ホントはマシンを大事に出来るんでげすな」 ルキノは、藤吉の視線から逃げるように顔をそむけた。 「お、俺はテメーらと違って、生きてくためにミニ四駆やってんだ・・・生活のためだっ!!」 ミニ四駆が好きかどうか。 そんな単純なことなのに、今まで考えもしなかった。 落ちていたマシンを拾ったか、金持ちの子供から奪い取ったか・・・始めたきっかけなど覚えてはいない。 でも、今はレースに勝てば金が入る。だから、どんな手段を使っても勝とうとする。ただ、それだけ。 うろたえていたルキノは、藤吉を見て はっとした。 藤吉は真っ直ぐな瞳でルキノを見つめている。 思わず息を呑む。真剣で、美しささえ感じられる表情。 「ミニ四駆をやってる理由は、人さまざまでげす・・・・でも、嫌々やっている人と、そうでない人の違いくらい、わてにも分かるでげす」 「ルキノは・・・ミニ四駆が好きなんでげす!理由をつけて、その気持ちをはぐらかしてるだけでげす!」 「ふ・・・・ふざけんなっ!」 ルキノは声を荒げた。藤吉は、その声に驚いて身をすくめる。 胸の奥底の、今まで誰にも触れられなかった部分を、不意に強くつかまれた・・・そんな感覚に襲われた。 自分でも驚くくらい、いとも簡単に心の中に滑り込んできた、藤吉の言葉。 耐え切れずに立ち上がった。 「いいかっ!俺はお前らみたいな甘ちゃんとは違う・・・お前を連れて逃げたのは財布を取り返したかったからだ!助けたわけでもなんでもね―んだ!!」 吐き捨てるように言い放つと、そのまま部屋を飛び出していった。 藤吉が止める間もない。 しんと静まり返った部屋に一人残された藤吉は、シーツを握り締めた。 微かに残る、ルキノの温もり。 シーツに顔をうずめると、涙をこぼした。 |
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