「Dolci Giorni」 page 6

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「・・・変な髪形」

ルキノは、藤吉の頭の天辺の尖がった癖毛を、指先でつまんで遊んでいた。
少し離れていたはずの距離が、いつの間にか縮まって、今は寄り添うように座っている。

くすぐったそうにしていた藤吉は、ふと思いついて顔を上げた。

「ルキノはF1好きでげすか?」

F1と聞いてルキノはパッと顔をほころばせた。
もちろんレース場に行ったりは出来ないが、街頭テレビでの観戦は欠かしたことがない。
彼の好きなチームは、カルロやミハエルと同じ、イタリアの赤い跳ね馬フェラーリ。

嬉しそうにフェラーリの話しをする饒舌なルキノに、藤吉は嬉しそうに微笑みかけた。

「良かった!F1が好きなら、きっとミニ四駆も好きでげす!ホントはマシンを大事に出来るんでげすな」

ルキノは、藤吉の視線から逃げるように顔をそむけた。

「お、俺はテメーらと違って、生きてくためにミニ四駆やってんだ・・・生活のためだっ!!」

ミニ四駆が好きかどうか。
そんな単純なことなのに、今まで考えもしなかった。
落ちていたマシンを拾ったか、金持ちの子供から奪い取ったか・・・始めたきっかけなど覚えてはいない。
でも、今はレースに勝てば金が入る。だから、どんな手段を使っても勝とうとする。ただ、それだけ。

うろたえていたルキノは、藤吉を見て はっとした。
藤吉は真っ直ぐな瞳でルキノを見つめている。
思わず息を呑む。真剣で、美しささえ感じられる表情。

「ミニ四駆をやってる理由は、人さまざまでげす・・・・でも、嫌々やっている人と、そうでない人の違いくらい、わてにも分かるでげす」

「ルキノは・・・ミニ四駆が好きなんでげす!理由をつけて、その気持ちをはぐらかしてるだけでげす!」


「ふ・・・・ふざけんなっ!」

ルキノは声を荒げた。藤吉は、その声に驚いて身をすくめる。

胸の奥底の、今まで誰にも触れられなかった部分を、不意に強くつかまれた・・・そんな感覚に襲われた。
自分でも驚くくらい、いとも簡単に心の中に滑り込んできた、藤吉の言葉。

耐え切れずに立ち上がった。

「いいかっ!俺はお前らみたいな甘ちゃんとは違う・・・お前を連れて逃げたのは財布を取り返したかったからだ!助けたわけでもなんでもね―んだ!!」

吐き捨てるように言い放つと、そのまま部屋を飛び出していった。
藤吉が止める間もない。



しんと静まり返った部屋に一人残された藤吉は、シーツを握り締めた。
微かに残る、ルキノの温もり。
シーツに顔をうずめると、涙をこぼした。

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「Dolci Giorni」・・・Sweet Days(伊)