「Dolci Giorni」 page 7

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泣き顔のような空からは、まもなく大粒の雨が降り出した。
ルキノはずぶぬれになりながらも、立ち止まることなく歩きつづける。
立ち止まってしまったら・・・必死で振り払おうとしているアイツの笑顔が浮かんでしまう。

アイツは金持ちだ。
何でか知らねーが、俺に なついてやがったし・・・
うまく利用することだけ考えてればよかったんだ。
利用するだけ利用したら、そのあと捨てればいいだけなんだ。
なのに・・・・どうして俺は・・・


俯き加減に歩いていたルキノの肩が、ガラの悪そうな少年達の一人とぶつかった。
必然的にケンカを吹っかけられる。
この人数では、腕に覚えの有るルキノでも、かないそうにない。

普段のルキノなら、隙を見て逃げるか、うまく取り繕ってやり過ごすはずだった。
負けると分かっているケンカはしない。スラムで身につけた、ルキノなりの賢い生き方。
けれど・・・

「うわあああっ!!」

ルキノは少年達に殴りかかった。



雨は徐々に小振りになり、やがて霧のように優しく街を包んだ。

ルキノを殴り飽きた少年達は、ゴミの散乱する路地裏に彼を放り投げると、唾を吐き捨ててその場を去っていった。


「う・・・・」

体を起こすことさえ ままならなかったが、全身の痛みのためか、意識だけは やけに はっきりとしている。
目を明けると、建物に挟まれた細長い空は、いつの間にか雲が晴れ、星が輝いていた。

一つ二つ見える、小さな星の瞬きを、ルキノは、ただぼんやりと眺めていた。
不意に、頬に感じた慣れない感覚。
自分でも気が付かないうちに、涙がこぼれていた。

自分で自分が分からない。こんな気持ちを、俺は知らない。
どうして、こんなに胸が痛い?
どうして、こんなに心がかき乱される?

「・・・・トーキチ・・・」

うめくように吐き出した声は、誰にも届くことは無く、吹き抜ける風の音に かき消された。

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「Dolci Giorni」・・・Sweet Days(伊)