「Dolci Giorni」 page 8

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「はぁ〜・・・」

ここは東京にある三国邸。
食事もろくに喉を通らず、口を開けばため息ばかり。
イタリアから帰国して数日間、藤吉は部屋にこもりっぱなしで、ずっとこの調子だった。

「ホントに元気ねーな」
ドアの隙間からそっと覗いていた豪がつぶやいた。
隣の烈も心配そうにうなずく。
ふさぎこんだ藤吉を心配した彦佐が、星馬家に電話をして二人を呼んだのだ。

「なー藤吉!どーしたんだよ?」
ここに来て10数回目の藤吉のため息に、豪は思わず藤吉に声をかけた。

烈も、豪に続いて藤吉に駆け寄った。
「悩み事なら、相談に乗るよ!」

藤吉は二人に気が付いているのか いないのか、相変わらずぼんやりした表情で遠くを見ている。
少し顔を上げると、弱々しい声でつぶやいた。

「ルキノに・・・会いたいでげす・・・」


「へ?!」

烈と豪の大きな声に、藤吉は ようやく二人の存在に気が付いた。
みるみる顔を真っ赤にすると、突っ伏していた机から跳ねるように離れた。

「あっ・・・!い、いたんでげすか二人とも・・・な、何か用でげすか?」

豪は呆れ顔で、彦佐に呼ばれたのだと、ここに来た経緯を説明している。
傍らで、何か思うところがあるのか、烈は考え込んでいた。

「ね・・・ルキノってロッソの?どうして会いたいの?」
烈の言葉に、藤吉はさらに顔を赤くして後ろを向いた。
烈も豪も、こんな藤吉を見たのは初めてだった。

「会いたいなら、会いに行けばいーじゃん!」

そう言って能天気に笑う豪を、烈はたしなめて、背を向けたまま俯いている藤吉を見つめた。
豪はふくれていたが、烈の真剣な顔を見て、同じように藤吉を見つめた。

「ルキノは、わてになんか会いたくないでげす・・・ルキノは優しくしてくれたでげす・・・でも・・・でもそれは・・・」
藤吉は、わぁっと泣き出した。


烈は、床にへたり込んで泣いている藤吉の傍にしゃがむと、ハンカチを差し出した。
豪は困ったようにマグナムをいじったり、頭をかいたりしている。

イタリアでのいきさつを だいたい聞いた烈は、藤吉が少し落ち着いたのを見て、優しく話し始めた。

「ルキノ君が財布を取り戻すために藤吉君を連れて逃げた・・・それは事実だよ・・・でも、ルキノ君がその気になれば、藤吉君の財布を奪ったり、ひどい事だってできたはずだよ」

ルキノはそんな事はしなかったと怒る藤吉を、烈は例えだから・・・となだめて話しを続ける。

「藤吉君は、ルキノ君を信じてるんだろ?だったら・・・確かめに行きなよ!」

藤吉は、はっとしたように顔を上げた。
烈は力強く微笑む。
豪も、よく分かっていないものの、とりあえずうなずく。

藤吉は立ち上がると、顔をゴシゴシこすって、数日ぶりの笑顔を見せた。

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「Dolci Giorni」・・・Sweet Days(伊)