「Gesichter」 page 2

INDEX BACK NEXT

カルロの部屋の前まで来たエーリッヒは、一息ついてから、ドアを数回ノックする。
・・・返事が無い。
訪ねる前に あらかじめ電話を入れておけばよかったと後悔するが、今更どうしようもない。

何気なしにノブに手をかけると、ドアが開いた。
中にいるのか出かけているのかは分からないが、鍵がかかっていないことに違いはない。
無用心さに呆れながらも、エーリッヒは部屋に入っていった。

「カルロ、ミハエル・・・いないのか?」
遠慮がちに部屋の様子をうかがっていたエーリッヒは、部屋の奥のベッドに目を向けた。
瞬間、信じがたい光景に目が釘付けになった。

上半身裸のカルロと、彼を胸に抱いて眠るミハエル。
窓から差し込む朝日に柔らかく照らされる その姿は美しく、思わず息を呑む。

エーリッヒはしばらくそのまま動けなかった。


ミハエルとの付き合いは、もう2年にもなる。
その間 目にしたミハエルは、いつもニコニコしていながらも厳しくて・・・
何より、誰に対しても、本当に心を許すことがない。
どんなに近くにいても、遠い存在。

そんなミハエルが、カルロには心を許している。
分かってはいたことだが、複雑な思いが去来する。

その時、ふとシュミットの顔が脳裏をよぎって、エーリッヒは青ざめた。
・・・何て報告したらいいんだ・・・。


「うーん・・・あれー、エーリッヒ?」
ようやく目を覚ましたミハエルが、顔色の悪いエーリッヒを見つけて起きあがった。
ミハエルに肩を揺らされて、カルロも目を覚ます。
「んだよミハエル・・・うげっ、何でお前がここにいるんだよ?!」



カルロは不機嫌極まりない顔で、彼にとっては まったくの招かれざる訪問者にコーヒーを渡した。
ミハエルにはホイップクリームまで乗せた砂糖たっぷりのそれを渡すと、ピザを手にベッドに腰を下ろした。
「わざわざ迎えにくるかフツー?過保護もいいとこだぜ!」

エーリッヒは何も答えずに、薄いコーヒーをすすった。
帰ってシュミットに何と言うか、その事で頭がいっぱいだったのだ。
見たままをありのままに報告するしかないのだが、その後のシュミットの反応を考えると気が重い。
まぁ、シュミットが心配していたようなことは無かったわけだが。

シュミットに嘘をつけたら、楽なんだがな・・・。

視線を落とす。
カップの中で揺れるコーヒーの向こうに見える、凛としたシュミットの姿。
その瞳に、どんな些細な嘘さえ つけないことを、エーリッヒはよく知っていた。

INDEX BACK NEXT

「Gesichter」・・・Faces(独)