「Gesichter」 page 3

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イタリアからドイツに戻る飛行機の中。
ぼんやりと窓の外を眺めるエーリッヒだが、隣にミハエルの姿は無い。
一緒に帰っても良かったのだが、自分がシュミットに説明してからの方がいいだろうと思ったエーリッヒが、ミハエルに午後からの帰国を勧めたのだ。
ミハエルは素直に喜んでいたが。

今から帰れば、ちょうど会議が終わったシュミットにばったり出くわすだろうな・・・
シュミットへの説明を あれこれ考えていたが、前夜あまり寝ていないせいもあって、エーリッヒは やがて小さな寝息をたて始めた。


「・・・報告を聞こうか」

会議が終わってユニフォームを着替えていたシュミットは、ロッカールームに入ってきたエーリッヒに唐突に切り出した。
少し声が上ずっている。
この分だと、会議中も気が気ではなかったようだ。

「俺が見たのは、カルロを胸に抱いて眠るミハエルの姿だけだ・・・心配することは無かった」

シュミットを安心させたい一心で、できるだけ平静を装って発したセリフだったが、さらりと言った事が、かえってシュミットの神経を逆なでしてしまった。
シュミットはユニフォームをロッカーに投げつけると、振り返ってエーリッヒに怒鳴った。
「そ、そんな状況で何も無かったって言うのか?あの男のことだ、信用できない!」

「ミハエルも嫌だったら抵抗するだろ・・・好きならいいんじゃないのか?」
エーリッヒは少しむっとして反論した。
シュミットに怒っているわけではない。
ただ・・・シュミットが、ミハエルを心配しているからとはいえ、カルロ−自分以外の男−に心を割いている。
その事が気に入らないのだ。
ちなみにミハエルは、『自分以外の男』には当てはまらないらしい。

シュミットは、そんなエーリッヒの複雑な心境には気が付かず、まだ怒りが収まらない。
「そりゃ、ミハエルが1から10まで知ってるなら構わないさ・・・私にだって責任があるんだぞ!」

再びエーリッヒに背を向けると、床に落ちたユニフォームを拾い上げ、軽くはたいてロッカーにしまった。
一息ついて、少しは落ち着いたようだ。
「だいたい・・・エーリッヒは無責任過ぎるぞ!ミハエルはリーダーだが、我々より二つも年下だということを、もう少し認識してくれよ」


「すまない・・・」

不意に後ろから聞こえた声に、シュミットは はっとなった。
怒りに任せて、エーリッヒに やつあたりをしていた自分に気づく。
シュミットは慌てて振り向くと、しょんぼりしているエーリッヒに謝った。

「ごめんエーリッヒ!言いすぎたよ・・・わざわざイタリアにまで行かせたのに・・・ごめん・・・」

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「Gesichter」・・・Faces(独)